ワインボキャブラ天国【第160回】「典型的な特徴(ブドウ品種、産地などによる)」 英:typicity 仏:typicite
- 2023.02.12
- ワインボキャブラ天国
連載企画『Firadis ワインボキャブラ天国』は、ワインを表現する言葉をアルファベットのaから順にひとつずつピックアップし、その表現を使用するワインの例などをご紹介していくコーナー。
このコラムを読み続けていれば、あなたのワイン表現は一歩一歩豊かになっていく・・・はずです!
取り上げる語彙の順番はフランス語表記でのアルファベット順、ひとつの言葉を日本語、英語、フランス語で紹介し、簡単に読み方もカタカナで付けておきますね。
英仏語まで必要ないよー、という方も、いつかワイン産地・生産者を訪れた時に役に立つかもしれませんから参考までに!!
ということで今回ご紹介する言葉は・・・
「典型的な特徴(ブドウ品種、産地などによる)」
英:typicity
仏:typicite(最後のeに右上がりアクセント 女性名詞:発音は「ティピシテ」
「典型的」…決して「個性がない」という意味ではないのです。
「いかにも典型的だよね」なんていう言い方を聞くと、個性がない/つまらないという印象を受けることもありますが、ワインに置いての「典型性」というのは決してネガティヴな意味ではありません。そのワインが造られた産地ならではの特徴、使用されたブドウ品種ならではの香りや味わいのキャラクターがしっかりと感じられることが「典型性」。生産者がその産地で誠実にワイン造りをしたことの証明のように受け取られます。
よって、例えばあなたが生産者を訪問しテイスティングをした際に、その地域の/その品種を使用したワインにしかない個性がしっかりと感じられるな、と思ったら「産地/品種ならではの典型的な個性がしっかりと出ていますね」等と言ってください。これは生産者にとっては、最高の誉め言葉の一つです。
「土地や品種の個性」を閉じ込めることこそが最重要、という考え方に。
伝統的なワイン産地では、産地毎に使用して良いブドウ品種や栽培法、収穫量までを厳密に規定されています。これはその土地で最も上質なワインを造るためには何を植え、何をすべきなのか、という歴史的な考察を前提に定められたもの。勿論近年ではその土地における新たな適性が見出されることもしばしば起こりますが、基本的にはワイン造りの長い歴史・時間を経て「ここでは、これが最適」としてルール化されたものです。
そして、ワイン造りは特定の産地に共通するルールの中でいかにしておいしいワインを造るか…というゲームが競われているようなもの。だからこそ、その土地(土壌)や気候条件などを徹底的に探究し、それを生かし、その土地ならではの個性を最も発揮できたワインこそがその土地最上のワイン、ということになります。だからこそか、ブドウを発酵させる酵母まで、その畑に自生していた自然酵母を使用する、それも区画毎に酵母を変える…まで徹底する生産者も増えてきていますよね。
つまり、その土地最上のワインが、産地や品種の個性を全く反映していない、突然変異種のような変わり種ワインであることはまずありません。中には驚くほど個性的なスタイルを持ったワインに仕上げてくる生産者もいますが、その根底には必ずその産地・品種でしか表現し得ない香りや味わいの特性が流れています。
ワインを楽しむことは、こういった生産者たちの「表現」を楽しむこと。だからこそ、ブドウ品種の個性や産地の特徴などを理解すればするほど、ワインを飲むのが面白くなっていくんですよね!
それでは今回はこのへんで・・・今日も、あなたの表現するワイン世界が少し広がりました!
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