気になるワイングッズ使ってみた!【第6回】アルゴンガスのワインセーバー
コラムシリーズ『気になるワイングッズ使ってみた!』第6回です。
今回は、2ヶ月ほど前に予告していた内容をやっとのことでお届けすることが出来ます。
ということでシリーズ第6回は、ブルゴーニュグラス比較実験の最後に予告していた「アルゴンガスのワインセーバー」をご紹介します!
「飲み残しワインを保持するためのグッズ」というものは、実は結構昔からありました。
その先駆者と言えばやはりバキューム方式でボトル内の空気を抜き真空状態にして酸化を防ぐ『vacu vinバキュバン』ですが、なんと1980年代の後半には発売されていたそうです(その頃はさすがに僕も未成年でしたので存在を知りませんでしたが・・・)。
そして近年は真空よりも「ガス置換」でボトル内の空気、つまり酸素によるワインの酸化を防ぐグッズが主流となってきました。
コルクを抜かずにニードル(ワインを抽出するための針)を挿し込み、ワインを抽出しながら空寸に窒素ガスを置換していく『CORAVIN コラヴァン』は、一番安いモデルでも35,000円程、上位モデルでは6万円以上という高額商品ながら、グラス販売をするワインでも最高の品質で提供したいと願うレストラン、ワインバーのプロソムリエからの確かな評価・信頼を受け、業務用だけでなくワイン愛好家の間にも広まっていきました。
*『コラヴァン』については、フィラディスでも実際に使用しての検証レポートを2018年に公開しています。
こちらは飲食店のお客様向けに書いた内容ですが、よろしければ読んでみてください!
↓↓↓
https://firadis.net/column_pro/201801_2/
とは言え・・・僕のように1本のワインをその日のうちに、または状態の変化を楽しみたいから2日間に渡って飲む、というくらいの人には正直あまり必要性の高いグッズではありません。
僕も実際に検証してみたことがありますが、『バキュバン』など真空方式の保持グッズはワインの状態変化の防止にはほぼ効果が無いと思っています。
だから、こういうグッズに関しては「気持ちの問題」程度のものと位置付けておりまして・・・『コラヴァン』に大金を投じるよりもその分のお金を飲むほうに費やしてきました。
そんな僕のところに、今回紹介する『アルゴン・ワインセーブ・プロ』の日本国内輸入代理店のヴィレッジ・セラーズさんから、このグッズを是非とも試してコラムを書いてもらいたい!というリクエストを戴きました。
このシリーズは基本的には僕が自分で購入したうえで使ってみて、思ったことを好き放題に書く、「役に立たない」「買うのはムダ」と思ったらはっきりそう書く、というスタンスでやっておりますので「本音で書きますけどそれでも良いですか」と聞いたら「それでも構いません」とのことだったので挑戦を受けて立つことにしました。
まあ、ヴィレッジ・セラーズさんなら同じワイン輸入・卸売商社として競合する立場でもありますから、忖度して甘い評価をする必要もありませんしね。
ということで送って頂いた『アルゴン・ワインセーブ・プロ』。
黒いスプレーボトル状の容器に入った、なかなかクールなパッケージです。
ちなみにお値段は税抜希望小売価格で3,500円、これでおよそ150回以上のガス充填が出来るそうです。
1回あたり26円くらいですから、『コラヴァン』よりははるかに安いですね。まず、価格的には手を出しやすいな、という第一印象でした。
*ちなみに『コラヴァン』は本体と別に窒素ガス入りのカプセルを購入する必要があるのですが、ワイン1本に使用するガスのコストが約700-800円くらいです。うーむ、ガスだけでも結構高いですね。
さて、それでは今回実施した検証の方法についてご紹介していきます。
今回僕は、同じワインをガス充填無し/ありのワイン2本を最長で1ヶ月間保管してワインの状態変化を検証していくことにしました。
選んだワインは、まず味わいの変化(特に酸化による劣化)が見えやすいように酸がシャープでフレッシュ感の強い白ワイン、そしてコルクはどうしても密閉性に微細な個体差が出てしまうので、スクリューキャップのものを選びました。
また、僕が個人的に好んで良く飲んでいて、味を正確に覚えているから変化の捉え易いもの、というのも選定の条件にしました。
具体的には、こちらのワインです。
『ヴァグナー・シュテンペル リースリング トロッケン グーツヴァイン』
具体的な検証の流れとしては、
・このワインを2本用意
・それぞれをガス使用/不使用ボトルに分ける
・状態チェックのタイミングは、2日目、1週間目、1か月後の3段階で設定。
・1回につき各ボトルから120mlずつを計量カップで注ぎ、常に2本のボトルの残量は同じとする。
・ワインを注いだらガス使用ボトルにのみアルゴンガスを注入し即座にスクリューキャップで閉栓。
・保管は自宅の冷蔵庫(普通の家庭用冷蔵庫です)
としました。
この『アルゴン・ワインセーブ』は不活性でほかの物質と反応しないアルゴンのガスをボトル内に注入することで、ワイン液面にガスの蓋を作って酸素との直接接触を防ぐイメージでしょうか。
酸素や窒素よりも重いアルゴンのガスは液面の真上に滞留しますから、ボトルの空きスペース全体にガスを注入する必要が無く、スプレー1プッシュ分で十分というのはなかなか経済的ですね。
それでは、早速検証のレポートです。
【2日目】
ガス不使用のボトル:酸のシャープさは保ちながらも全体に果実の甘みが出て柔らかに。
良質な経時変化で、2日目ワインならではの魅力を楽しめました。このワインはやっぱりおいしい!!
ガス使用のボトル:こちらは驚くほどに初日と同じ状態。このワインはフレッシュな段階だと微発砲が感じられるのですが、それも残っていました。
キレのあるシャープな酸がそのままに楽しめます。抜栓したての状態がそのまま保たれていることに、ちょっと感激。
【1週間後】
ガス不使用のボトル:この時点でも全く問題なく飲めますが、いったん柔らかくなった果実味が弱まり、酸のアタックが強くなってきた感じ。
ただしこの酸は抜栓直後の果実由来のフレッシュな酸ではなく、酸化によって出てきたやや引き締めの強い酸。
徐々にワインが劣化に向かう兆候か、と思いました。
ガス使用のボトル:少し変化が表れてきていますが、こちらは酸と果実味のフレッシュ感にバランスが保たれています。
不快さを感じるような酸の強いアタック感は無く、普通においしく楽しめました。ただ、経時変化の面白さはこの時点でもあまり感じられず。
そこは物足りないかも。
【1か月後】
ガス不使用のボトル:かなり酸化が進み、味わいのバランス的にも果実味が落ちてきて「酸っぱい」という印象がかなり強くなっています。
ただ、それでも「とても飲めたもんじゃない」という程ではありません。
スクリューキャップの密閉性による品質保持力もありますし・・・そして何よりも、このワインそのものの力でしょうね。
ガス使用のボトル:こちらもさすがに酸が強くはなっていますが、ガス不使用のボトルに比べるとフルーツの甘い感じがまだ残っています。
1ヶ月経ってこの状態というのは、驚きでした。
『ワインセーブ・プロ』には、確かな品質保持機能があると感じました。
検証結果は、以上です。
1ヶ月間ずっと背高のドイツワインボトル2本が冷蔵庫に鎮座しておりまして、邪魔くさいなあ・・・と思うこともありましたが、遂に1ヶ月目が経ってワインを開けるときはなかなか感慨深かったです 笑
結論としまして・・・僕がこの『アルゴン・ワインセーブ・プロ』をお薦めするなら、以下のような場合でしょうか。
・1本のワインを少しずつ飲むので、3日~2週間程度の保管をしたい方
・ヴィンテージワインを2日以上に分けて飲みたいとき
・産地や品種など、タイプの異なる数種類のワインを同時に開けて飲み比べたいとき
普段飲みの若いワインを2日間以内で飲んでしまうのなら、正直言って特にガスを注入する必要は無いかな、と思います。
特に僕個人は、若いワインに関しては開栓からの自然な変化を楽しみたい派。
2日目に「さてさて、どうなったかな・・・」とワクワクドキドキしながら飲んでみて、感激したりガッカリしたり、というのもワインの醍醐味です。
でも、やはりヴィンテージワインや上級のワインについては2日目の「落ち」も激しいですから、このガスを使用して保管することをお薦めしますよ。
『アルゴン・ワインセーブ・プロ』、『コラヴァン』よりもお手軽な価格で十分な品質保持能力、十分にお役立ちのアイテムだと思います!!
気になった方は是非試してみてくださいね。
ご紹介した『アルゴン・ワインセーブ・プロ』、輸入販売元の『ヴィレッジ・セラーズ』さんによる詳細資料はこちらからご参照ください。
↓↓↓
http://www.village-cellars.co.jp/pdf/argon_winesave_pro.pdf?fbclid=IwAR2Xnemz_rojhuuHqtL9cwm8D8gUefYjLjPc1C3ZI2qMcR4lG7JMiHw6k24
*ちなみに、この商品は『ワインセーブ』という名前ですが、ワインに限らず他の食品・飲料にも使えるそうです。
フレッシュさが大切なオリーブオイルやお醤油などにも使えますね。用途が広いのはありがたいです!!
ということで今回はこのへんで・・・
シリーズ第7回は、ワイングラス比較実験第3弾!
シャンパーニュ、ブルゴーニュに続いてですから勿論「ボルドーワイン用グラス」を取り上げます。
ボルドータイプについては正直あまり形状のバラエティが無いのですが、3-4タイプくらいを選んで比較し、ご家庭で最もおいしくボルドーワインが楽しめるワイングラスを選出したいと思います!
次回のコラムにもご期待くださいね。
そして、引き続き皆さまからの「こんなグッズ、試して欲しい!」という実験リクエストもお待ちしております!!
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