ワイン職人に聞く、10の質問【第60回】グロジャン・フレール(イタリア ヴァッレ・ダオスタ州)
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』
第60回 グロジャン・フレール(イタリア ヴァッレ・ダオスタ州) 醸造家 エルヴェ・グロジャンさん
イタリア20州で最小面積の小さな州「ヴァッレ・ダオスタ」州は、イタリア最北西部でフランスとスイスの国境に接し、なんと州総面積の85%を丘陵・山岳地帯が占めるという、非常に険しい産地です。
急勾配の山肌にぴったり寄り添うように設けられたテラス状のブドウ畑・・
まさにアルプスの山々の真ん中にあるため、昼間は背後にそびえるモンブランからの照り返しで気温が上がり、夜は急激に気温が下降。
この厳しい気象条件のおかげで果実がゆっくりゆっくりと熟し、熟度と酸度のバランスが良い素晴らしいブドウが収穫されるというわけです。
イタリアでも指折りの過酷な産地でワイン造りに打ち込む職人は、何を想っているのか。
今週も生産者の哲学に迫る一問一答インタヴュー、始まりです!
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒自分の人生として、運命付けられていたようなものだ。
私はワイン造りの家系で産まれ育ち、この仕事の素晴らしさを長きに渡ってずっと教えられてきた。でもワイン造りとへの本当の情熱と興味はゆっくりと醸成されるものでね・・・この仕事を実際に始めてみて、色々なことに取り組めば取り組むほどパッションが深まっていくのを感じるよ。
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒あまりこういう生産者はいないかもしれないが、ワインを瓶詰めする時だね。2年から3年かけて見守ってきたワインがいよいよボトルに詰められる時が、ひとつの到達点に感じるんだ。
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった)ときは?
⇒「辛い」と感じることはあまりないが、春から夏にかけてブドウが育っていく段階での山間部の作業は本当にハードだと感じるよ。急斜面の畑では、基本的に全てが手作業だからね。
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒ひとつには、やはり発酵過程だ。果物がワインというお酒に変貌を遂げながら、美しい色合い・香り・味わいが創造される過程だからね。そして勿論、そのためには果実の状態を的確に分析して、収穫のタイミングを見極めるのも大切だと思う。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒スイスの「コルナラン」種のワイン。成熟が遅く育てにくい品種のためか一般的には普及していないが、ソフトなタンニンと控えめな酸で飲み心地が素晴らしいと思う。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒私はやはりピノ・ノワールのファンだからね・・・様々な生産者のものを試したが、モレ・サン・ドニの2008年は本当に素晴らしいと思う。
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒グロジャンのピノには、野性的なジビエ肉が一番良く合うと思う。そこに地元のチーズとポレンタ(トウモロコシの粉で作ったお粥状の料理。マッシュポテト的な添え物です)があれば、言うことは無いよ!!
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒今ワインを造っている場所から比較的近いが、やはりピエモンテだ。その中でも特にアルバ・・・自分にとっては、もう一つの故郷のような場所だと思っている。
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒フランス語の諺で『Bien faire et laisser dire.(きちんとやり、あとは言わせておけ)』。私の祖父がずっとこの言葉を言っていてね・・・自分の仕事でベストを尽くしているなら、他人がそれをどう判断しようが気にするな、ってことだよ。
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒アオスタは本当に美しい場所なんだ。是非皆さんに訪れて欲しいと思っているよ!!
・・・エルヴェ・グロジャンさんへの一問一答インタヴューは、以上です。
今回のインタヴューは如何でしたか??
『Bien faire et laisser dire.(きちんとやり、あとは言わせておけ)』。
非常にワイン生産者らしい言葉ですよね!
自分の目指すこだわりを徹底的に実行したのならあとは自然に任せ、マーケットの情勢や外野の意見には惑わされない・・・
強い信念と、自分への信頼があってこそ貫ける哲学だと思います。
(僕のメールマガジンなんか、皆さまから戴いたご意見からすぐに影響を受けますから 笑)
ヴァッレ・ダオスタのワインは、イタリア20州の中では輸入量が特に少ないのでなかなか体験する機会がないかもしれません。
イタリアワインを総括的に知りたいという方は勿論、例えば「ピノ・ノワール」という品種に着目した時にも試しておくべき産地と思います。
この地を代表する『グロジャン』で、是非新たな産地との幸福な出会いを果たしてください!!
≪ピノ・ノワール好きなら、絶対に体験するべき価値のある1本だと思います。≫
『グロジャン・フレール ピノ・ノワール ヴィーニャ・ズリアット』
≪様々なハーブの印象が爽やかなミュスカ・プティ・グラン100%白ワイン。味わいは非常にリッチなスタイル。≫
『グロジャン・フレール ヴァッレ・ダオスタ ミュスカ・プティ・グラン』
≪様々なハーブの印象が爽やかなミュスカ・プティ・グラン100%白ワイン。味わいは非常にリッチなスタイル。≫
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