ワイン職人に聞く、10の質問【第70回】ピエール・ブリセ (フランス・ブルゴーニュ地方)
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』 第70回
ピエール・ブリセ (フランス ブルゴーニュ地方) オーナー ピエール・ブリセさん
連載コラムシリーズ『ワイン職人に聞く、10の質問』、第70回は2014年にファーストVTをリリースした今注目の新進気鋭の造り手『ピエール・ブリセ』が登場です。
ピエールはもともと家系がブドウ農家でも、ワイン学校で醸造学を修めたわけでもない、いわゆる「異業種からのワイン造り参入組」。
もともとパリでインターネット事業を起業していましたが、元来大のブルゴーニュ愛好家だったためにどうしてもじぶんのワインを造りたいという気持ちを抑えることができず、2010年に自身のネットビジネスを売却し(事業の売り先はなんと日本の楽天さんだったそうです!)、その資金でワイン造りを始めた、という行動力のある男。
自社畑の所有面積は僅か0.5haと本当に小さな造り手ですが、ファーストヴィンテージの2014年から早くも大注目。
ワイン好きだったら是非今のうちにその存在を知っておいて戴きたいと思います。
それではピエールさんのインタヴュー、早速始めましょう!
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒この世界に入る前に飲んだ沢山のワイン、訪れることのできた美しい土地、そして会うことのできたワイン造りに関わる人々、全てが僕をワインを造る人生に導いてくれた。
長い間デジタルの世界に身を置いてきたけど、僕の情熱が下した「ずっと大好きだったブルゴーニュに畑を買ってワインを造る」という決断は正しかったと思うよ。
あの時のエモーションと熱い想いの全てを、今造っているワインの中にしっかり閉じ込めたいね!!
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒それはやっぱり初めての収穫だよ!
2014年、シャサーニュ・モンラッシェの畑の収穫が無事に終わって、さあワインを造り始めるぞ!となった時。
最高に幸せな気持ちだったな。
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった)ときは?
⇒私は2014年にワイン造りを始めたばかりなんだけど、3年目でいきなりブドウが霜にやられてね・・・
まだまだ経験の浅い段階だったし、本当に辛い思いをしたよ。
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒1年間の長い間、繊細な作業を一つ一つ積み重ねていくことしかないよね。
それぞれのステップが全て重要な意味合いを持ち、後々の出来上がりに影響を与えていくのがワイン造りだから。
でも、最終的には最適な熟度のブドウを収穫することが一番大事なポイントになって来るんじゃないかな。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒多層的であり、且つその土地ならではの特性を完璧に感じ取れるワイン。
ブルゴーニュはテロワールの多様性が極限まで細分化されて現れる土地なので、それがワインの最も重要なエッセンスだと思う。
良い条件に恵まれた土地、かつそこで最大限の努力を重ねてこそ素晴らしいワインが出来る、それを常に自分の理想・目標としていたい。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒僕はやはりブルゴーニュを心から愛しているのでひたすらそればかり飲んでしまうのだけど、どうしても最高の1本を選ばなくてはならないのなら『ドメーヌ・ラモネ シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエ・クリュ・モルジョの2004年』を選びたい。
実はこのワインを飲んだ数年後に同じ区画を購入してワインを造り始めたのだけど、全くキャラクターの異なるワインになった。
これがワイン造りのマジカルなところだね!
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒ごく当たり前のおすすめになってしまうのだけど・・・
白ワインには新鮮な魚介類なら何でも、赤ワインには牛肉のグリル。
ただ、あまり強い味付けはせず、素材の香りや味わいが生きるスタイルで楽しんで欲しいと思う。
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒そうだな・・・多分コート・デュ・ローヌの北野エリア、コート・ロティかエルミタージュを選ぶと思う。
僕はあの土地のテロワール、そしてワインが大好きなんだ。
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒「ワイン自身に、テロワールを語らせろ」
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒僕は皆さんの住む日本の文化、伝統そして食べ物を素晴らしいものだと思っている。
その国で自分のワインが飲まれているのだと思うと、心から誇らしいよ。
日本料理の繊細な味わいと僕の造るワインはきっと綺麗に寄り添うはず。
是非、色々な料理に合わせて楽しんでみてください。
・・・ピエールさんへの一問一答インタヴューは、以上です
毎度毎度、異業種参入組の造り手から話を聞くたび「いつか自分も・・・」なんて思い描いてしまう自分がいます 笑
たとえ同じアペラシオンの同じ区画からでも、造る人間が変われば全く違うワインが出来る。
そしてそこには、決してテロワールだけでは超えられない「人の力」による優劣も生まれる。
だからこそワインは面白いし、造り手のことを深く知りたくなるんですよね。
このインタヴューをさせて戴いた2020年12月の時点では、彼のワイン造りはまだ7年目。
既に驚異的なワイン造りセンスを発揮しているピエールさんですが、これからヴィンテージを重ね経験を積むごとに、その精度は更に高まっていくはず。
彼の進化を、これからも一緒に見届けていきましょう!!
『ピエール・ブリセ ブルゴーニュ・ルージュ』
『ピエール・ブリセ ブルゴーニュ・ブラン キュヴェ・カサネア』
『ピエール・ブリセ ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ コンブ・オー・モワンヌ』
『ピエール・ブリセ シャンボール・ミュジニー プルミエ・クリュ レ・クラ』
『ピエール・ブリセ シャサーニュ・モンラッシェ プルミエ・クリュ アベイ・ド・モルジョ』
『ピエール・ブリセ シャサーニュ・モンラッシェ プルミエ・クリュ グランド・モンターニュ』
『ピエール・ブリセ シャサーニュ・モンラッシェ プルミエ・クリュ グランド・リュショット』
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