ワインペアリング奮闘記 第89回 ガブリエル・プーレ オート・コート・ド・ニュイ・ブラン 2005年×イトヨリダイのアーモンド・シェリー・ソース

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ワインペアリング奮闘記 第89回 ガブリエル・プーレ オート・コート・ド・ニュイ・ブラン 2005年×イトヨリダイのアーモンド・シェリー・ソース
『お料理パパのワインペアリング奮闘記』第89回
“複雑味”の長熟ブルゴーニュ白ワインに、ご家庭でできるペアリングを!
 
このコーナーは毎回課題のワインに合わせたお料理を実際に作ってレポートするコラムです。コラムの性質上下記について、ご容赦いただいております。
 
■失敗してもやり直しできませんので、その時は何がダメだったのか考察する回とさせて下さい。
■子供に乳製品アレルギーがあるため、チーズやクリーム、ミルクなど乳製品不使用です。
今回のお題はガブリエル・プーレ オート・コート・ド・ニュイ・ブラン 2005年』です。
ブルゴーニュのなんと16年熟成白ワイン。品種はもちろんシャルドネです。3千円台後半ですから、このジャンルではお手頃な部類ですね。掘り出し物かもしれません。

テイスティング:

16年も経っていますが、まだコルクには弾力があってさほど苦労せずに抜けました。コルク下部はやや脆くなっており、やはり熟成年数なりの変化が見られます。
ワイングラスに注いでみると、
表面には輝きがあり、黄金がかった濃いめのイエロー。
香りをとってみると、果実香としてはドライフルーツ系で、桃や杏・カリンなど核果類の香りを中心に感じます。
そして熟成由来のノン・フルーツ系の香りもしっかりと感じます。
例えば、黄色い花のポプリや、リコリスやナツメグ、シェリー酒、藁、うーん、古い桐タンスのような香りでしょうか。
口に含んでみると、少しオイリーというか、粘性のある滑らかな口当たりですね。
アタックから果実のボリューム、アルコール感ともにしっかりと感じました。
少し甘やかな果実味で、まだまだジューシーですが、蜜っぽく変化している部分も感じます。
酸味は豊富で、その輪郭はマイルド。中盤から軽く舌を締め付けるミネラルとタンニン、後半にかけて仄かにな苦味が現れます。
鼻に上がってくる熟成バターや、ヴァニラ、ロースト・ナッツ等のフレーヴァーを感じながら、余韻は長く、複雑に変化しながら持続していきます。
全体として・・・感じ取れる情報量がとても多く、メモし切れないくらいでした!
長期熟成を経て、様々な香りと味わいを獲得した複雑な白ワインなのですが、一方でフレンドリーな熟した果実味や、蜜っぽさなど、甘やかな要素も持ち合わせているので親しみやすくも美味しさを感じます。
とても本格的ですし、熟成したブルゴーニュの白ワインがどのように複雑みを獲得するのか、5,000円、10,000円といった高級レンジに進む前に、それを知るとっかかりとして飲んでみても、大変面白い白ワインではないでしょうか。

合わせる料理:
料理の方ですが、このワイン、正直言ってペアリングはやや難しめだと思います。
いえ、もちろんシンプルなソテーに塩胡椒やレモンを絞って、でもおつまみとしては構いません。
ただそれだと、ワインの印象ばかりが残って、料理の味わいは記憶に残らないかもしれません。ちょっと勿体ないですね。
一方、頑張って上手くペアリングできれば、ご家庭でもかなりレベルの高いマリアージュを体験できるポテンシャルがあるはずです。
ちょっとハードルをあげてしまったかもしれませんが、ワインから感じたニュアンスを分解し、素材、味付けとロジカルに考えていく今までのアプローチには変わりありませんので、一つ一つ考えてみましょう。

まずメインの素材ですが、ボリューム感のあるシャルドネになりますので、淡白系の白身魚、豚肉、鶏肉なども候補として挙がります。なるべく地味深さのある天然物が良いと思いますので、手に入れやすいのはやはりお魚でしょうね。
調理方法は、白ワインにややロースト感を感じるので、焼き物をチョイス。
香り、味わいの要素のマッチングですが、ワインに感じた、熟成バターや、ナッツ。これらをソースに用いれば、白ワインと料理の距離を近づけることができると思います。※このコラムは乳製品NGですのでバターはオリーブ・オイルに差し替え
今回はソースにもより複雑味を持たせるために、シェリー酒(フィノ)を使用します。ここはヒラメキですね。
こうして辿り着いた料理は、『イトヨリダイのアーモンド・シェリー・ソース』となりました。

レシピ:
イトヨリダイは軽く塩をふって5分ほど置き、出てきた水分をキッチンペーパーで吸い取っておきます。
フライパンにオリーブオイルを敷いて皮目から両面を焼きます。
魚を取り出したら、軽く拭き取って新しいオリーブ・オイル(もしくはバター)を入れ、アーモンドスライスをこんがりするまでソテー。最後にシェリー酒を注ぎ入れて、軽く煮詰めソースにします。
お皿に魚を盛り付けて、ソースをかけます。
フライパンにシェリー酒を少し足し、キノコ (タモギタケ)を1分程酒蒸しにしてトッピングしました。黄色いキノコを選んだの色調のマリアージュを意識してです。
全体にブラック・ペッパー、乾燥タイムを振りかけて、完成です!

ペアリングレポート:
ダイニングテーブルの席に着くなり漂う香ばしさ、食欲をくすぐります。
早速イトヨリダイを大きめ一口いただいて、グラスの中で黄金にたゆたうガブリエル・プーレ オート・コート・ド・ニュイ・ブラン 2005年を流し込みます。
・・・おおおお。大変、美味しゅうございます
料理の方ですが、ソースのこってりとした余韻、結構強めに残る感じです。このオイル感とナッツの風味が持続している中で、白ワインのトロッとしたテクスチャと複雑味が重なって来ると、とても立体的な味わいの世界が見えて来ます。
本来的な、淡白な白身魚のテクスチャと、白ワインの酸味との相性の良さは勿論のこと。
焼き上げたイトヨリダイの皮目、アーモンドソースのクリスピーな香ばしさと、白ワインのナッティでオイリーなニュアンス。
シェリーの華やかな上方に抜けるような華やかさと軽いフロール香がもたらす複雑なアロマに対して、白ワインの長期熟成による語り尽くせないほどの複雑な香味。本当に贅沢な美味しさです・・・!
幸いなことに、沢山の要素は喧嘩することなく積み上がり、マリアージュという白亜の城を見事に描き出してくれました。
作るときはちょっと悩みましたが、工夫して上手くいったときの喜びこそ、ペアリングの醍醐味。
今は幸せの余韻に浸るだけです(笑)。

さて、今回のペアリング如何でしたでしょうか。
再三「複雑」と口にしていますが、イトヨリダイのレシピ、意外とシンプルだと思いませんか?
アーモンドやシェリー酒を使うことで、あまり難しいテクニックを使うことなく、熟成ブルゴーニュ・白ワインに拮抗する複雑味のあるソースを作ることが出来ました。
ご家庭でも使えるテクニックかと思いますので、ご機会があればお試しください。
それでは、次回もお楽しみに!

(西岡)
 

今回のペアリングワイン:
ガブリエル・プーレ オート・コート・ド・ニュイ・ブラン 2005年


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