コンビニ惣菜ペアリング道 第26回「もうすぐ土用の丑の日、今回のテーマはスーパーで買った『鰻の蒲焼』です!」
- 2022.07.17
- コンビニ惣菜ペアリング道
「…忘れちまったか、そうだよ俺だよ、マリアージュ師匠だよ。」
コラムシリーズ「コンビニ惣菜ペアリング道」、第26回となりました!コンビニ、スーパー、デパ地下などのお店で売っている市販のおつまみ・レトルト食品などで何の手間もかけずに色々なワインペアリングを楽しんじゃおう!というちょっとズボラなペアリングチャレンジ企画です。
実は前回が1月の終わりくらい「ランプフィッシュキャビアの回」でしたので随分と更新をサボってしまいました…申し訳ありません!!
目次
「コンビニ惣菜ペアリング道」とは?
それではまず、今回初めてこのシリーズを目にされた方にまずご説明しておきますね。
コラムのタイトルは「コンビニ惣菜ペアリング道」とはしているものの、基本は「お手軽に手に入る、調理しなくて良いおつまみ」をペアリングチャレンジのテーマにしています。これまで25回分の記事はすべてアーカイブ掲載してありますので、是非これまでのチャレンジ結果も見てみてください。
これまでのシリーズアーカイブはこちらから!B級グルメとのペアリングも色々やっております。
↓↓↓
https://firadis.net/column/category/souzai-pairing/
それでは続いて今回第26回のコラムテーマを発表!
日本人のスタミナ源!『鰻の蒲焼』
今回も「食べるものは決まっていて、それにはどんなワインが一番合うのか?」を検証していくスタイルの実験です。選んだテーマは『鰻の蒲焼』!コラムのページ公開日が本年の「土用の丑の日」の1週間ほど前ということで、急遽予定されていたテーマ「イクラ」を変更してお届けすることに致しました。
鰻、というと蒲焼や白焼き、鰻巻きにひつまぶしなどの食べ方で楽しまれる「日本の贅沢料理」というイメージが強く、合わせて楽しむお酒はビールや日本酒がメインになりますよね。
ですが、鰻は実は欧州などでも普通に食べられている食材です。
例えばワイン好きの皆さんにもお馴染み、フランスのボルドー地方には鰻(ただし、種類は「八目ウナギ」です)をニンニク、ポワロ―葱などの野菜と一緒に赤ワインで煮込んだ料理『lamproie a la bordelaise(ランプロワ・ア・ラ・ボルドレーズ)』があり、サン・テミリオンなど右岸地域のメルロ主体赤ワインと合わせて楽しむのが一般的です。また、川魚の料理が郷土料理であるロワール地方でも鰻の赤ワイン煮込みが家庭料理として楽しまれています。
そこでふと気付くのは、フランスでも鰻は赤ワインでじっくりと煮込み「甘辛」の味わいで楽しんでいるということ。フランスでは鰻は基本的に天然ものなので、泥の臭みや灰汁が多く臭い消しとしっかりとした風味を付けるために赤ワインで煮込まれます(白ワインを使う地域や料理法もあるようです)。
と、いうことは!
同じ甘辛の味わいである日本の蒲焼だってワインに合うということです。実際、一部の鰻専門店さんではワインの品揃えに力を入れ、様々な鰻料理とワインのペアリングを提案されています。
今回は赤ワインの中でも鰻に合うとされている3つの代表的な黒ブドウ品種を選び、それぞれと鰻蒲焼の相性を検証してみることとします。
今回選んだ鰻は、ご自宅で手軽に食べることを想定して普通のスーパーで売っている鹿児島県産1尾2,000円くらいのものを選定。加えて、より脂身が多い中国産の鰻蒲焼(こちらは半身で800円程)も比較のために用意してみました。
それでは早速家に帰って、マリアージュ実験開始です!
赤ワインブドウ品違い3種を用意していよいよペアリング実験開始です!
今回のワインの選定はシンプルに「赤ワインの代表的ブドウ品種で、鰻に合いそうなもの」という観点だけで以下の3つとしました。
1. メルロ主体のボルドー産赤ワイン
2. グルナッシュ100%のコート・デュ・ローヌ産赤ワイン
3. ピノ・ノワール100%のブルゴーニュ産赤ワイン
まずはメルロ、こちらは当然ボルドーの郷土料理を意識しての検証。
グルナッシュはたっぷりした果実の甘さと柔らかなタッチが食感として合いそうだから、というチョイス。
そしてピノ・ノワールは、甘辛の味わいに瑞々しい酸と旨みを加えることでマリアージュが完成するのでは・・・?という仮定からのセレクトです。
ちなみにここに入っていてもおかしくないカベルネ・ソーヴィニヨン、シラーを外したのは、そのタンニンの強さが鰻の柔らかな食感と相性が良くないかな。。。と思ってのもの。甘辛で強い味付けはしていますがやはり白身魚でもありますので、敢えて候補から外す判断をした形です。
これで準備は万端。実食を始めます。
ワイン3種類×鹿児島県産&中国産鰻の食べ方でペアリング実験開始!
ワイン1種に対し、2種類の鰻蒲焼を合わせていきます。鰻は蒲焼単体、ご飯は無し。
試食の順番は鹿児島県産⇒中国産、脂の多い中国産を後にしました。
評価は、3種のワインについて2通りのペアリング検証を5つ星中のいくつかで採点するいつものスタイルです。
それでは、1本ずつ検証の結果を紹介していきたいと思います!
1.メルロ主体ボルドー産赤ワイン
2.グルナッシュ100%コート・デュ・ローヌ産赤ワイン
3.ピノ・ノワール100%ブルゴーニュ産赤ワイン
マリアージュで酸が果たす役割、そして香りのマリアージュの重要性
という訳で鰻と黒ブドウ3品種のマリアージュ実験も無事終了となりました。
結果は「鹿児島県産(国産)に山椒適量×ピノ・ノワール」が最も合った、ということになります。
この組み合わせ、本当に、素晴らしくおいしかったです!
今回の気付きとしては2点。
まずは「マリアージュにおいて酸が果たす役割の重要性」ですね。日本料理では酸味のあるものというと酢の物みたいなものしかなく、後はレモンなどの柑橘類を絞る、梅肉を加えるなど薬味的な扱いが多いので、五味の揃ったバランスの良い味わいを完成させる、となるとどうしても一緒に楽しむお酒や飲み物でプラスすることになってきます。
その際にワインが持つブドウ果実由来のフレッシュで甘さのある酸味は料理の甘さ・塩味と調和しやすく、役割を的確に果たしてくれるんですよね。
勿論、甘み×甘みで味を同方向に同調させる、という戦略もありますが、やはり「マリアージュ」という一つ上の段階に持っていくには複数の味覚要素が必要かと思います。
そしてもう1点は「香りのマリアージュ」。
今回の実験では、山椒についてはどうしても好き嫌いの分かれる薬味なので「後から足してみる」程度の気持ちでいたのですが、実験を1口1口進めるにつれその重要性が際立って見えてきました。
特にピノ・ノワールの香りと山椒の香りが交わったフレイヴァーが口の中に広がったときには、思わず「うわっ、良い香り!」と口に出てしまったほど。
スパイシーなワインを飲むときには、料理にも香辛料を加えて…といった形で料理をワインに近付けていく戦法がありますよね、例えば、黒胡椒の香りのするカベルネ・ソーヴィニヨンには挽き立て胡椒たっぷりのペッパーステーキ、とか。
ワインのペアリング、最後の余韻・残響までが嚙み合ってこその完成。残り香の構築に関しても、より意識的になることで更なる素晴らしいマリアージュが生まれるのだ、ということを強く認識することができ、有意義な実験となりました!シンプルに、おいしいものたっぷり食べられて幸せでしたしね。
さて、それでは今回はこの辺で。毎回毎回、長いコラムを最後まで読んで戴いてありがとうございます!
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