ワイン職人に聞く、10の質問【第86回】ベルナール・ブレモン(仏シャンパーニュ地方)
- 2021.09.05
- ワイン職人に聞く、10の質問
- イタリア, ヴィエイユ・ヴィーニュ, グラス, シャンパーニュ, ソムリエ, テイスティング, テロワール, ピノ・ノワール, マリアージュ, 写真, 哲学, 熟成, 生産者, 職人
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』 第86回
『ベルナール・ブレモン(仏シャンパーニュ地方)』
醸造家:ティボー・ブレモンさん(写真右)
連載シリーズ『ワイン職人に聞く、10の質問』、86人目にお話を聞いた生産者はシャンパーニュ地方アンボネイ村にドメーヌを構える『ベルナール・ブレモン』。
現在醸造責任者を担うファミリーの2代目、ティボー・ブレモンさんが10の質問に答えてくれました。
最上のピノ・ノワールを生むモンターニュ・ド・ランス地区の『アンボネイ』村に、なんと樹齢90年以上というシャンパーニュ地方でも希少極まるヴィエイユ・ヴィーニュを持つ小規模栽培醸造家。豊満で優美、大らかな果実味で飲む人誰もがリラックスして楽しめるシャンパーニュは、ワイン好きならずとも誰もが素直に「おいしい!」と笑顔になれるスタイル。日本では特にプロのソムリエたちからの信頼が厚く「様々な好みの人が飲むグラスシャンパーニュとして提案するのに最適な1本」という評価を戴いています。
今回のインタヴューへの回答を見て思ったのは・・・・その寛容で大らかなスタイルは、テロワールだけでなく造り手の思いや人間性も反映したものだったんだな、ということ。
ブレモンのスタイルが垣間見えるインタヴュー、是非読んでみてください!
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒小さいころから両親がしている仕事を継ぎたいと思っていたよ。
とりわけ、父は畑仕事へのパッションを僕に伝えてくれた。おいしいワインを作るには、土に敬意を払い、美しいブドウを育てるために畑を丁寧に耕す必要がある。
そして、アンボネイのテロワールのポテンシャルを最大限を引き出すための仕込みを行う・・・ベルナール・ブレモンでは、AからZまでパッションと真摯さを以てワイン造りに取り組んでいるんだ。
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒困難なヴィンテージの後に素晴らしいヴィンテージに巡り合えた時、だね。
ワイン職人の一生が美しい人生か取るに足りないものか・・・考え方は人によると思うけど、収穫、熟成、テイスティングと常に驚きに満ちていて充実しているよ。畑仕事から醸造、お客さまのフルートグラスにシャンパーニュが注がれるまで、あらゆる場面で常に感動の多い仕事だと思うんだ。
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった、大変な)ときは?
⇒2003年の霜被害を受けたとき。
5月頭までは早生りでブドウも順調に成長していたのだけど、忘れもしない2003年5月6日…この日はシャンパーニュ地方にとって悲劇な日だった。
霧の濃い日で、そして最低気温はマイナス4度まで下がったんだ。霧が晴れ、視界がよくなったその時の光景は悲惨なものだったよ。将来ブドウの房になるだろう黄色かった粒は、霜に焼かれ、揃って茶色になっていた。全滅だよ。
唯一収穫の可能性が残されていたのはピノ・ノワールの副芽。最終的に実る可能性は決して高くなかったのだけど、少なくともその年の樹液の循環には貢献するし、翌年の収穫への準備を樹が整えるために重要だと考えたんだ。
結果的に収量は非常に低くなったけど、予想以上に素晴らしいクオリティのピノ・ノワールが収穫できたことは幸いだったよ。
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒それは何よりも収穫だと思う。
ブドウの成熟度を混まなくフォローすること、中でも酸度と糖度のバランス、そして衛生状態が大切。
後はひたすら天気予報をにらみながら、どのタイミングをベストの摘み始めときとするか決断すること。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒感動・・・または「鳥肌」をもたらしてくれるワイン。
余韻が長く、更にその余韻の先に「もう一度!」と思わせるなにかがあるワイン、とも言えるかな。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒『シャトー・オー・ブリオン1988年』・・・・大切な友人たちと開けたんだ。
ワインそのもの、そしてその感動を分かちあったという共有感も感動的な思い出だね。
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒自分のワインと・・・という質問に申し訳ないんだけど 笑、Q6で選んだ『シャトー・オー・ブリオン1988年』を暖炉で焼いてくれたアンガス牛のステーキと合わせたとき・・・・これが自分にとっての最高で特別なワイン体験だな。
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒冬がこれほど長くなく、こんなに雨がふらずに、シャンパーニュからそう遠くないところ・・・うん、イタリアかな!
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒「テロワールへのパッションが生み出す感動」だね。
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒素晴らしいワインを飲んだ時の「鳥肌感」、感動と感激は記憶に深く刻まれて、人生の一部になり得ます。
新しいワインとの出会いがこの魔法のような感動を生みだすのだから、どんどん新しいワインを飲んでみて、と言いたいな。
そしてこの五感全てを用いた体験は、誰かと共有することでさらに大きなものになり得ると思うよ!
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