ワイン職人に聞く、10の質問【第90回】ジェレミー・アルノー(仏ブルゴーニュ地方シャブリ)
- 2021.11.21
- ワイン職人に聞く、10の質問
≪ひとりのワイン職人の頭の中を覗く一問一答インタヴュー!≫
『ワイン職人に聞く、10の質問』 第90回
『ジェレミー・アルノー(仏ブルゴーニュ地方シャブリ)』
オーナー・醸造家:ジェレミー・アルノーさん
連載シリーズ『ワイン職人に聞く、10の質問』、第90回目に登場するのは仏ブルゴーニュ地方シャブリの『ドメーヌ・ジェレミー・アルノー』。ボルドーの『シャトー・クレール・ミロン』やブルゴーニュの『ヴァンサン・ジラルダン』など数々の蔵元で修業を重ねた後、2016年に0.55haの畑を購入し自らのワイン造りをスタートしたばかりのまさに新星中の新星です。
現在造っているのは1級畑『グランド・ショーム』『ヴォー・ド・ヴェイ』そして0.07haという極小規模の『プティ・シャブリ』のみ、年間総生産量はギリギリなんとか5,000本に届くか届かないか…。特にいちばんスタンダードあプティ・シャブリの年間生産量は僅か600本という超マイクロ・ドメーヌですが、その精緻なテロワール表現力に早くも世界のワインジャーナリスト・専門家からの注目を集めています。
僕は彼の造る非常にミネラリーで骨太且つなシャブリを生牡蠣に合わせてみて「生牡蠣とバッチリ合うシャブリ、あるじゃない!…合わない合わない書いていたのを経験不足として反省しなくては。」と思わされました。僕の人生で飲んだシャブリの中で、一番牡蠣に合ったんじゃないかと思いますよ。
まあ反省は後でするとしまして、早速ジェレミーさんの一問一答インタヴューをはじめましょう!
Q1:ワイン造りを一生の仕事にしよう、と決意したきっかけは何ですか?
⇒僕がワイン造りを生涯の仕事にしようと思ったのは、シャブリの生産者協同組合で働いていた両親の姿を見てきたから。僕はシャブリで産まれて、この仕事について新しい冒険を始めるべく学位を取得したんだ。自分のヴィジョンとフィロソフィーを投影し、そしてこの産地の伝統も踏まえた僕だけのワインをずっと造りたかった。
Q2:これまでワインを造ってきて、一番嬉しかった瞬間は?
⇒僕がワイン造りで最大の幸福を感じたのは、やっぱり初めて自分のワインを仕込んだ時かな。そして、それ以来1年1年同じ幸福な瞬間が訪れるんだ。家族と一緒に出来上がったワインを飲んで、両親が誇らしげに感じてくれているのが一番嬉しいよ。
Q3:その反対に、一番辛い(辛かった、大変な)ときは?
⇒どのワイン生産者も言うだろうけど、そりゃあ悪天候だよ。だって、それまでやってきたことがたったの2分で全部ダメになっちゃうんだよ?
Q4:ワイン造りで最も「決め手になる」のは、どの工程だと思いますか?
⇒1年間の仕事を通じて、自分自身そして今いる場所のテロワールを信じ続けることじゃないかな。
Q5:あなたにとっての「理想のワイン」とは?
⇒僕の理想のワイン…そうだね、若くフレッシュなんだけど同時に円熟もしていて、哲学を感じさせるようなワインかな。そして、醸造家の個性がはっきりと表れていて、顔が見えること。
Q6:今までに飲んだ中で最高のワインを1本だけ選ぶとしたら?
⇒コシュ・デュリのムルソー、ヴィンテージは忘れてしまったんだけど、とても古いものだった。
Q7:自分のワインと料理、これまでに一番マリアージュしたと思った組み合わせを教えてください。
⇒僕が最も薦めたいのは、クリームチーズ!
ブルゴーニュの『スーマントラン(訳注:塩水で表面を洗ったタイプのウォッシュタイプチーズ)』や『エポワス(ワインの搾り粕で造った蒸留酒「マール・ド・ブルゴーニュ」を加えた塩水で洗ったウォッシュタイプチーズ)』、あとは『シャウルス(シャンパーニュとシャブリの中間くらいの町シャウルスで造られる白カビチーズ)』とも相性が抜群だよ。
Q8:もしあなたが他の国・地域でワインを造れるとしたら、どこで造ってみたいですか?
⇒好きなところを選べるチャンスがあったとして…それでも僕はブルゴーニュを選ぶんだろうな。
だって、ここは素晴らしいテロワールに恵まれた特別な場所だから。
Q9:あなたの「ワイン造り哲学」を、一言で表現してください。
⇒ブドウ樹の力を信じること、忍耐、そしてワイン造りにおいては「やさしさ」だね。
Q10:最後に・・・日本にいるあなたのワインのファンに、メッセージを!
⇒日本には本当に素晴らしい食材・食文化があるよね。僕は、シャブリというワインは日本の伝統食と素晴らしく合うと確信しているんだ。是非、僕のワインをしばらくの間寝かせてから楽しんで欲しいと思う。
そして、いつか必ず日本に行って、皆さんと一緒に自分のワインを味わいたいよ!
ジェレミーさんへのインタヴューは以上です。お楽しみいただけましたか??
ワイン造りの哲学で「やさしさ」というのは、初めて聞いたかもしれません。確かに、彼の造るワインは非常にミネラリーで骨太、太い柱がしっかりと中心に聳え立っているようなのに、時間が経つとどんどんクリーミーに柔らかく。果実のポテンシャルをしっかりと引き出せるよう、丹精込めて丁寧にブドウを育てたのだということが犇々と伝わってくるようなワインです。
既に注目度はうなぎ上りの生産者ですから、そう遠くない日には日本市場の割り当て数も減っていくことでしょう。
是非今のうちに彼のワインを体験して「ジェレミー・アルノーなら日本に初めて入ってきた頃から知ってるよ・・・いい造り手だよね」なんて言って戴けたら嬉しいです!
『ドメーヌ・ジェレミー・アルノー シャブリ・プルミエ・クリュ・ヴォー・ド・ヴェイ』
『ドメーヌ・ジェレミー・アルノー シャブリ・プルミエ・クリュ・ヴォ―ド・ヴェイ・グランド・ショーム』
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