あ、せかんどおぴにおん 第5回「ドメーヌ・ペルノー・ペール・エ・フィス ブルゴーニュ・コート・ドール」
目次
『あ、せかんどおぴにおん』第5回
「ドメーヌ・ペルノー・ペール・エ・フィス ブルゴーニュ・コート・ドール」
このコラムについて
あなたが五感で捉える感覚と他人が感じる感覚は同じとは限りません。もしかすると、同じ言葉で表現される感覚でも人によって感じている実際の感覚は異なるのかもしれません。逆にたとえ同じ感覚を得ていたとしても、人によって別の言葉で表現することはよくあることです。
疑心暗鬼になりながらも、”自分はどう感じるか”、ワインをテイスティングする際の実際の感覚に最も適した言葉を必死に探す。相手にわかってもらえるようにワインの状態や魅力を伝えることが目的だとしても、どうしてもその人の個性が出てしまう。それもまた、ワインテイスティングの醍醐味であると思います。
このコラムは現在夜メルマガと『ワインと美術』のコラムを担当させていただいている、Firadis WINE CLUBの新人、篠原が当店のワインを飲み尽くしていくコラムです。
しかしただテイスティングをしていくだけでは面白くありません。そこで、すでにページに掲載されている店長による商品説明やテイスティングコメントを引用しながら、自分ならどう思うか。もう一つの意見を記していきます。当然店長に同意する場合も多いでしょうし、異議を申し立てることもあるでしょう。(あまりにも異議を申し立てるとFiradis WINE CLUBの信頼が揺らぎそうですが。。)また同じことを感じていたとしても、稚拙ながら別の表現で述べる場合もあります。そして時には商品ページの内容について、店長に質問することもあるかもしれません。
このコラムを読んでいただく物好きな方には、ぜひ同じワインを手元に置きながら、”自分はどう感じるか”を一緒に探ってほしいと思います。タイトルに「あ、」と不定冠詞「a」を付けたのはあくまで一つの意見にすぎないということです。皆様の意見についてはもしよろしければ、商品詳細ページのレビューにぜひご投稿ください。
それでは早速商品ページを見ていきましょう!
5回目にとりあげるのは、日本ではフィラディス独占販売のブルゴーニュ生産者、ドメーヌ・ペルノー・ペール・エ・フィス のブルゴーニュ・コート・ドールです。
そもそもFiradis WINE CLUBのブルゴーニュ・ピノ・ノワール多すぎやしませんか。
まずはこの話から。Firadis WINE CLUBのブルゴーニュ・ピノ、つまり村名格までいかない地域名の格付けがされているピノ・ノワールが多すぎやしないか、ということです。正直多すぎてどれを買えばいいのかよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。
実際に数えてみましょう。カタカナが続いて目がチカチカしそうになる方は、ぜひ迷いなく読み飛ばしてください。価格の低い順からブルゴーニュの地域名格のピノ・ノワールは、フィリップ・ジャノ (クイントン・ジャノ)ブルゴーニュ・ピノ・ノワール、フランソワ・ド・ゴーダール ブルゴーニュ・ピノ・ノワール、ドメーヌ・ルイ・ギョーム ブルゴーニュ・ピノ・ノワール、ドメーヌ・デュパキエ・エ・フィス ブルゴーニュ・ルージュ・コート・ドール、ドメーヌ・ルシアン・ミュザール ブルゴーニュ・ピノ・ノワール、フランソワ・ダレン ブルゴーニュ・ピノ・ノワール、そして今回のドメーヌ・ペルノー・ペール・エ・フィス ブルゴーニュ・コート・ドール。ここまでが税込3,000円台ですね。
税込4,000円台へ突入すれば、フランソワ・カリヨン ブルゴーニュ・ルージュ、ピエール・ブリセ ブルゴーニュ・ルージュ、ピエール・ジラルダン ブルゴーニュ・ルージュ エクラ・ド・カルケール、ドメーヌ リシャール・マニエール ブルゴーニュ・ピノ・ノワール、、でここまでが税込5,000円以下のライン。あとはもう数えたくないのでやめます。。
というわけで数えてみると税込4,000円以下だけで7つ、5,000円以下で11。とてもじゃないですがなかなか把握できないですよね。高い価格帯ならまだしも、4,000円以下というブルゴーニュの中では比較的低い価格帯のワインが、これほどまで多く存在する必要があるのか。この中でも、今回扱うのは税込み3,000円台最後の砦、ドメーヌ・ペルノーのピノ・ノワールです。この価格順における位置関係が今回は重要です。この位置関係を押さえたうえで、改めてFiradis WINE CLUBのブルゴーニュ・ピノ・ノワールがなぜこれだけ数が多いのかという理由を考えてみましょう。
ちなみにこのドメーヌ・ペルノーだけブルゴーニュ・ピノ・ノワールやブルゴーニュ・ルージュ(フランス語で赤)ではなく、ブルゴーニュ・コート・ドールという名前になっていますが、これは2019年ヴィンテージからで、つい最近まで販売されていた2018年まではブルゴーニュ・ピノ・ノワールとして販売されていました。ブルゴーニュ・コート・ドールという呼称はブルゴーニュにおいて2017年に新たに生まれた、非常に新しい呼称です。いわゆるジュヴレ・シャンベルタン、ヴォーヌ・ロマネなど、村名格よりは下の格でありながら、ブルゴーニュ全体よりは狭い地域のピノ・ノワールのみを使っているよ、ということです。指定地域は北はディジョンの南方から、南はマランジェまでの、コート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌの二つの地域を合わせた歴史的にコート・ドール(黄金丘陵)とよばれていた地域に該当します。ただのブルゴーニュではないよ、という差別化の一つの方法ですね。ドメーヌ・ペルノーは2019年ヴィンテージから通常のブルゴーニュ・ピノ・ノワールではなくこの呼称を使っていますが、価格に変化はありません。
話は少しそれましたが、本題に戻りましょう。Firadis WINE CLUBのブルゴーニュ・ピノ・ノワールの数の多さについて。これを考えるにあたり、皆様に押さえてほしいブルゴーニュワインの実情があります。
ブルゴーニュワインの価格高騰
ブルゴーニュ人気によるワイン価格の高騰がブドウ畑の地価上昇につながり、それがブドウ畑を購入(投資)する人や考え方の変化をもたらしました。そしてブドウ畑の地価上昇は相続税の値上がりを引き起こし、高額な相続税のためにワイン価格は更に引き上げられることになるという価格上昇のスパイラルを生んでいるのです。
急にかなり難しい話になってしまいました。上の文章を読んで、よく意味が分からなくても大丈夫です。上記の文章は『フィラディスワインコラムプロ』という、お取引様であるレストラン、酒販店などワインを取り扱うプロ向けに毎月お送りしているニュースレターをコラムとしてまとめたものからの抜粋です。
上記の引用は「ブルゴーニュを脅かす、ブドウ畑価格の高騰」という記事から。プロ向けの記事なので理由等々まで詳細に検証し、やたらとむずかしそうなので、こういう記事もあるんだ~と思っていただければ十分です。とにかくここで皆様に押さえておいてほしいのは、「ブルゴーニュの価格が高騰している」というその事実だけです。
長年ワインを飲まれている方なら、自分が若いころにはもっとブルゴーニュワインが手軽な価格で楽しめた、と思っている方も多いのではないでしょうか。もちろん物価の上昇やブルゴーニュに限らずワイン全体が高騰しているということはありますが、その中でも特にブルゴーニュの価格高騰は著しいです。美味しいブルゴーニュがどんどん手が届かない価格になってしまう。これはワインを飲まれる皆様にとって死活問題です。そして当然フィラディスが取引させていただいている、レストランや酒販店にとっても死活問題です。だからプロの方向けにこのような記事を出しているというのが最近の実情なのです。
これが今回の話とどう関係するのか。いよいよ、なぜFiradis WINE CLUBのブルゴーニュ・ピノ・ノワールはこれほどまでに多いのか、という問いの答えに入ります。
レストランや酒販店へワインを卸す専門商社フィラディス
ネット通販Firadis WINE CLUBは今年で6周年を迎えますが、株式会社フィラディス自体は2003年に設立しています。ネット通販のFiradis WINE CLUBが始まるまではプロのレストランや酒販店にワインを卸すのみでした。そしてそのプロの味をご家庭でも、というコンセプトでFiradis WINE CLUBは皆様に支えられております。
なのでまずはプロの方が喜んでいただけるようなワインを探し出し、輸入してくること。それこそがフィラディスの最も重要な役割でした。
ブルゴーニュ・ピノ・ノワールは、例えばレストランではグラスワインとして使われることが多い、ブルゴーニュの中では低価格帯のワインです。何よりもブルゴーニュのピノは需要が高いので、必ず一つは、あるいはいくつかはラインナップに入れておきたいものです。しかしお店の価格帯にもよりますが、グラスワインとしてあまり高いワインは使えない。そして何よりレストランのグラスワインはまずお客様の目につくお店の顔として、他の店との差別化が重要です。
フィラディスはブルゴーニュの価格が高騰しているという厳しい状況の中で、プロの方に喜んでいただけるように、できるだけ低い価格の中でコストパフォーマンスが高いワインを探すという困難な使命を仰せつかっているのです。むしろ価格が高騰しているからこそ低価格帯の美味しいワインのニーズが高まっているといえます。そして差別化のために同じ比較的低価格帯のブルゴーニュ・ピノ・ノワールの中でも、より細かな区分で様々な価格や味わいのニーズに応えようと生産者を増やす必要がありました。
そうしてプロ向けのワインを一般の方々に販売するFiradis WINE CLUBのブルゴーニュ・ピノ・ノワールの数も多くなったのでした。近年特に、価格や味わいなど皆様のさらなるニーズに応えるべく、Firadis WINE CLUB独占販売のワインも一気に増え、現在の数になっています。
しかし数が多ければ、選ぶのも難しい。それこそ今回のドメーヌ・ペルノーのピノ・ノワールをどんな理由で選ぶのか。もちろん人気のピノ・ノワール4本セットのうちの1本でもあるので、セットを買って気に入っていただいて、その上でリピートしていただくに越したことはないのですが。あくまでニーズがあるからこそFiradis WINE CLUBで取り扱っているわけで。このワインを選ぶ必然性について考えてみます。
生産者について
ドメーヌ・ペルノ―は、フランスの有名な吟遊詩人ステファン・リエジャールと、彼にブドウ畑を与えたその地の城主によって1900年頃に築かれました。ドメーヌのワイン造りはそこから4世代に渡って継承されています。
現当主は4代目のパスカル・ペルノー、ディジョン大学で醸造学とワイナリーの経営学を修めたのち、家業を引き継ぐ前に、個人ワイン愛好家や専門家クライアントを顧客とするネゴシアンで5年間のビジネスを経験。その後ファミリーのドメーヌを継承し醸造家となりました。繊細・エレガントスタイルのワインを愛する彼は、抽出は最低限に抑えつつ長い間のマセラシオンを信条とし、樽熟成においても適切な新樽比率で穏やかに熟成させます。
所有畑はジュヴレ・シャンベルタンに4ha、コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ2ha、その他のAOPブルゴーニュ区画を1ha。畑には全てピノ・ノワールが植えられ醸造は赤ワインのみ。ジュヴレの所有区画はほとんどが丘の中腹にあり、土壌は粘土石灰岩。深さ約50 cmには鉄分と石が多く、非常に良い水はけが確保されています。所有区画の中でパスカルが最も愛する「EnChamps(アン・シャン)」の土壌は赤い粘土で急な傾斜が特徴的。日照に恵まれ、高い熟度が約束されています。
これまで日本市場に入ってきたことの無い注目生産者をフィラディスが発掘。ワイン通販Firadis WINE CLUB完全限定での販売となります。ブルゴーニュラヴァーの皆さま、是非一度はお試しください!
というわけでようやくドメーヌ・ペルノーの話になります。上記の通り、日本初進出のFiradis WINE CLUB独占販売の生産者です。
実はドメーヌ・ペルノーについてはページに記載されている情報以上、語れることがないのです。英語で調べるなどするとわかるのですが、生産者情報をインターネットにほとんど出していない生産者です。商品ページの生産者情報は、採用を決めてからすべて直接生産者に丁寧にインタビューした情報です。これが私たちがわかる情報のすべてなのです。逆に言えば取り扱いワインとしての採用の決め手は生産者情報ではないのです。つまり採用理由は味わいに尽きる、ということです。
最初に重要な点として、このワインがギリギリ3,000円台という価格だということをあげたのを覚えていますでしょうか。Firadis WINE CLUBには美味しい2,000円台のブルゴーニュ・ピノ・ノワールもいくつもあるのに、このワインを選ぶ必然性、それこそがやはり味わいの品質なのです。さてその味わいの品質を確かめるべく、いよいよテイスティングです。
いよいよテイスティング
≪店長のテイスティングコメント≫
菫の花とアールグレイティー、奥の方にほのかな樽香も感じますが、このワインの中心軸はあくまでもフルーツ感に。抜栓したばかりでも果実の甘味は十分に開き、酸も優しくフルーツの「丸み」が全体像として描かれていきます。
驚くのは、抜栓から時間を経る毎に果実の純度/凝縮度が同時並行で明確に、そして優美になっていくこと。ブラックフルーツの香りが立ち上がっていき、全体像が強く、濃く。味わい各要素のパワーバランスは決して均等ではないのに、トータルバランスは良い。その最終形態の仕上がりに生産者の狙いを強く感じました。いいワインです!
(ワインレヴュー担当:Firadis WINE CLUB店長 )
さていよいよテイスティング。このワインを飲んで私が一番印象に残ったのは、綺麗な余韻の長さでした。
店長のコメントの通り、香りは樽香のような雰囲気もわずかに感じつつ、前面に立ち上ってくるのは爽やかなベリーでした。果実のパワーの充実とともに、エレガントな味わいの期待も高めます。
そして口に含むと期待が現実に。ちょうどいい心地よさの酸のおかげで、果実にパワーがありますが、見事にバランスを保ち、涼やかさ、エレガントを保っている。タンニンもしっかりと底に感じますがあくまで味わいを支える基盤としての安心感として。全くゴワゴワしたり、気になるようなものではなありません。上方向の酸と下に敷かれたタンニン、この骨格の塩梅が絶妙で果実の量に負けずエレガントさを保っている。果実が綺麗に美味しく感じました。
その綺麗なまま、余韻が口に長く残ります。ワインを一口飲んだとして、その口をじっくりと口の中で楽しむだけでなく、飲み込んだ後でも長く綺麗な味わいを楽しめる。これはある意味ではお得なワインだと思います笑。
このお得さ(?)、そして絶妙なバランスの妙。
2000円代のブルゴーニュ・ピノ・ノワールに対して、一段上の3,000円代後半という価格に、私は納得しています。
もちろん売る側なので納得していなければおかしいと言えばそれまでですが。このワインこそ、皆様の意見が知りたいです。これまで飲まれたことがある方も多いと思うので、どれだけの満足感を得られたか。たくさんの異論反論をレビューにてお待ちしております。
Firadis WINE CLUBの新人、篠原がお送りいたしました。
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